薔薇の洞窟は存在するのか?

「薔薇の洞窟」というものについて調べているが、調べても情報が出てこない。拷問の類いなのか、それとも処刑場の一種なのか、それすらもあまりよく分からない。中世スウェーデンで行われていた、ということだけ情報がありますが、それ以上のことは分からないので、もしかしたら実際に行われてはいなかったのかもしれません。

おおよそこのような内容のメッセージが届きました。

調べた結果、薔薇の洞窟はおそらく牢の一種であり、そして勘違いから想像された産物であろうと私は結論付けました。

順を追って説明しましょう。

「薔薇の洞窟」を辿る

日本のサイトを探す

まず、この言葉がどこで使われているのかを探すところから始めました。

最初に調べたのは手元の資料。拷問関係の情報についてはそれなりに集めているという自負があったのですが、「薔薇の洞窟」という言葉は見つかりませんでした。

次に、ネットで「薔薇の洞窟」を検索してみました。関係がありそうな情報は2件ありました。

片方はTwitterの解説botだったのですが、これはネットの情報を引用して紹介するだけのアカウントだったので無視します。

もう片方は、某まとめサイトの記事でした。その中で、「中世のスウェーデンで使われた」「毒蛇などがいる」「処刑である」などの情報が出てきます。

おそらく、今回メッセージをくれた人もこの記事を見たのではないでしょうか。

11. 中世のスウェーデンで、囚人は「バラの洞窟」の刑を受けた。響きのいい名称だが、実際は洞窟の中にはバラの代わりに、有毒な昆虫や爬虫類がうようよしていた。

囚人は、有毒な蛇や爬虫類、昆虫でいっぱいの洞窟に送り込まれ、やがて噛まれたり刺されたりして毒死するのだった。暗い時は有毒な生き物がどこにいるかが分からない恐怖を、明るい時は他の人が、毒が回って死にゆく姿を目の当たりにすることになった。いずれにせよ、まさに最悪の悪夢だ。

残酷な歴史。人が人を殺す、11の方法

ちなみに、このまとめサイトは英語の記事を翻訳したものらしいです。後にも書きますが、実際に見に行ったら似たような(というより、同じ)ことを書いていました。

日本語で調べられる範囲では、おそらくこれが「薔薇の洞窟」に関する全てでしょう。次は海外のサイトを調べていくことにします。

海外のサイトを探す

まず、先ほども挙げた日本のサイトの引用元を調べました。内容は日本のものと同じです。

Prisoners were sent into a cave filled with venomous snakes, reptiles, and insects and were eventually stung and poisoned to death. At times it was dark, and victims didn’t know where the deadly critters were, and other times it was well-lit so that they would watch each other die. Either way, literally my worst nightmare.

buzzfeed.com

内容が同じというより、このサイトでは全く同じ内容を多言語で発信しているらしいですね。いずれにせよ、ここには新しい情報はありませんでした。

他にも海外のサイトを調べてみたが、似たようなまとめサイトばかりで新しい情報は全く出てきません。というより、文章の構成や使われている画像を見るに、そのほとんどは引用であるように見えます。

結局、海外のサイトを調べた結果は、日本のサイトで得られたものと同じでした。

というより、「薔薇の洞窟」の情報を取り扱っているのはまとめサイト1つだけで、それ以外の情報は全てそのサイトからの引用ではないかと考えられます。

書籍で探す

最後に、先ほどのまとめサイトの出典に当たることにしました。これは記事の中のリンクになっている部分から辿ることができます。

タイトルは『Execution: The Guillotine, the Pendulum, the Thousand Cuts, the Spanish Donkey, and 66 Other Ways of Putting Someone to Death』。電子書籍が700円ちょっとで買えるとのことなので、早速買って読んでみたところ、処刑や拷問について解説する本でした。

この本の中に、「 CAVE OF ROSES」つまり「薔薇の洞窟」の記述がありました。下に翻訳したものを掲載します。

薔薇の洞窟

これは珍しく、そしてあまり知られていないスウェーデンの死刑執行方法である。犠牲者は多数の蛇や毒を持つ生物がいる洞窟に閉じ込められる。暗闇の中で犠牲者は刺されたり、噛まれたりして死に至る。このような目的での洞窟の使用は、1772年に国王グスタフ3世によって廃止された。

『Execution: The Guillotine, the Pendulum, the Thousand Cuts, the Spanish Donkey, and 66 Other Ways of Putting Someone to Death』 – p89

ここで、「1772年に国王グスタフ3世によって廃止された」という新しい情報が現れました。なぜこの記述がまとめサイトの方に書いていないのか疑問ですが、とにかく収穫があったので良しとします。

この情報を元にさらに調べたところ、「1772年に」「グスタフ3世に中止された」「Rosenkammaren」という物があることが分かりました。核心に近づいたという手応えを感じます。

Rosenkammarenとは何か

この言葉は、日本のサイトでは見つかりません。なので、海外のサイトで探すことになります。

調べたところ、「Rosenkammaren」は別名「Rose Chamber」とも呼ばれており、スウェーデンの首都であるストックホルムにかつて存在した「Nya smedjegården」と呼ばれる刑務所にあった、拷問を行うための牢、つまり懲罰牢であることが分かりました。日本語にするなら、薔薇の部屋といったところでしょうか。

この牢の中には水が張ってあり、また中に入れられた囚人を拘束するための鎖が天井から下がっていました。描写を見るに、これは水牢の一種ですね。

しかし先に書いた通り、1772年に当時の国王であるグスタフ3世によって廃止されています。残念ですが、実物を見ることはできないでしょう。

これらの情報は、今までのまとめサイトや書籍の情報と比べて明らかに別物です。

しかし同時に、1772年にグスタフ3世によって廃止されたという点や、名前に「rose 」という単語が付いている点など、偶然で済ませるには大きすぎる共通点もあります。

私が想像するに、「薔薇の洞窟」という処刑方法は、「Rosenkammaren」の内容が誤って伝えられて生まれたもの、つまり想像の産物です。

少なくとも廃止された経緯などの点で、両者は混同されていると見て間違いないでしょう。

しかし、そうなると疑問も生まれます。洞窟という単語がどこから出てきたのかとか、毒蛇はどこから湧いて出たのかとかなどですね。

が、これはどう調べても出てきません。もしかしたら、スウェーデンには囚人を毒蛇の住む洞窟に入れる処刑方法があったのかもしれませんし、「Rosenkammaren」の中は毒蛇の住処になっていたのかもしれません。

しかし、調べても情報が出てこない以上、これらの想像を確かめる事はできないでしょう。

結論

色々と書いてきましたが、「薔薇の洞窟」は「Rosenkammaren」の情報から誤って生まれたものであり、おそらく想像の産物である。というのが私の結論です。

仮に実在したとするなら、あまりにも情報が少なすぎますからね。ネット上にないだけで、現地の図書館や博物館にだけ存在している可能性は否定できませんが。

以上で、薔薇の洞窟の調査を終わります。