ピケット

拷問の方法にはいくつかパターンがあるが、その中でもよく使われる方法の1つに「吊るす」というのがあります。

犠牲者を縄などで宙吊りにするというこの方法がよく使われるのは、それだけメリットが多いということでしょう。

ピケットpicquet)は、そんな「吊るす」拷問の一種です。

方法

西洋式の吊るし責め

ピケットを行うためには、人間を吊り下げるための縄と柱、そして人間を乗せるためのペグと呼ばれる道具が必要です。

ペグとは、テントを張る際に固定するための杭のとこです。

キャンプをする人なら、馴染みのある道具かもしれませんね。

現代のペグは使いやすいように色々と改良されているようですが、当時のものはシンプルな木の杭を想像した方が実物に近いと思います。

このような形の木の杭の先端を、指に刺さらない程度に丸めたものが拷問に使用されます。

拷問方法はシンプルで、犠牲者の足の親指をペグに乗せ、片腕を手首のところで縄で縛り、柱から吊り下げるだけです。

このとき、反対側の手足は縄で1つに縛ることも忘れてはいけません。

すると犠牲者は、手首と足の親指のみで全体重を支えることになります。

この状態で犠牲者は1日につき30分程度、2日間に渡って尋問されることになりました。

吊るし責めとしては優しい……かもしれない

この拷問具による最も大きな苦痛は、ペグに足の指が食い込むことでしょう。

ただしこのペグは鋭利なものではないため、指に刺さることはありません。

とはいえ、手首につけられた縄に体重を預けなければペグに全体重がかかるわけで、それがどれほどの苦痛になるのかは容易に想像できます。

余談ですが、ピケットは拷問としては、特に西洋で行われる吊るし責めとしては、優しい部類の拷問であったと言えるでしょう。

なぜなら、西洋で行われた吊るし責めとしてより一般的なものでは、肩を脱臼させることによって苦痛を与えていたからです。

こちらの方法では、犠牲者は両腕を後ろで組まされて縛られて吊るされます。

実際に腕を後ろで組んで上に持ち上げてみれば分かりますが、この状態は肩に強い負荷がかかります。

あまりやりすぎると、肩の関節が外れるので注意してください。

さらに極端な拷問では、腕を縛り上げた後、高い場所から犠牲者を落とすということもされました。

当然、犠牲者の肩は一瞬で脱臼することになります。

足の指への苦痛と肩の脱臼による苦痛を比較することは本来できないのかもしれません。

しかし、もしもどちらかの拷問を必ず受けなければならないとなれば、私はピケットの方を選ぶと思います。

歴史

軍での懲罰として誕生した

この拷問は、もともとは軍での兵士に対する懲罰として行われたものです。

使用される道具がペグなのも、身近にあったものを利用したからだと考えられます。

懲罰目的なので、もちろん関節を外すような深刻なダメージを与えるわけにはいきません。

後に残るようなダメージを与えず、なおかつ懲罰という目的に足る苦痛を与える。

目的のための手段として、なかなか優秀だったのではないかと思います。

ちなみに、懲罰として用いられていた際には、片腕を柱に固定するときに手首ではなく親指に縄をかけました。

つまり、手の親指と足の親指で全体重を支える必要があったということですね。

流石にこの方法は危険と判断されたのか、拷問では親指ではなく手首に縄をかけるようになっています。

少しだけ、手心を加えられたということですね。

本当に少しだけですが。

19世紀に行われた

この拷問が行われた例として、イギリス人のトリニダード総督であるトーマス・ピクトンThomas Picton)が1801年に行ったものがあります。

彼は総督として赴任して早々、ルイサ・カルデロンという10歳程度の少女に対し、窃盗を自供させるために拷問を行います。

そこで使われた拷問の1つに、このピケットがありました。

このときの拷問で、少女は1日目に45分間、2日目には22分間、杭の上に乗せられました。

どちらの日でも少女は杭から引き下ろされるたびに失神し、2日目の拷問が終わった際には両足とも変色していたとされています。

2日間に渡る拷問の後も、少女は牢に足枷をつけて収監され、8ヶ月もの間そのままの状態で置かれました。

この拷問自体は現行法に基づいて行われたものであり、違法なものというわけではなかったはずですが、この件でトーマス総督は有罪判決を受けています。

これは、イギリスにおける拷問への考え方が変化した例だと言えるかもしれません。

参考文献

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