ユダの揺り籠

揺り籠というと、生まれたばかりの赤ん坊を寝かせるための籠状のベッドを想像するでしょう。
しかし、拷問の世界で揺り籠といえば、真っ先に連想されるのはユダの揺り籠(Judas Cradle)でしょう。

その形状からして既に恐怖感を煽る造形をしているこの拷問具は、当然ですが赤ん坊の為の道具ではありません。
犠牲者に無理やり自白を強要するための道具です。

形状と使用方法

ユダの揺り籠とは、上部にピラミッド状の三角錐や円錐が付いた背の高い金属製または木製の背の高い台と、その上部にある犠牲者を縛って吊るす拘束具がセットになった装置です。たまに、下にあるピラミッド部分のみを指してユダの揺り籠だと解説されることがありますが、使用方法を知れば拘束具がセットになった拷問具であると納得できると思います。

この拷問具を使用する際、まずは犠牲者の衣服を全て剥ぎ取ります。これには屈辱を与えるという意味と、肛門や陰部を露出させる意味がありました。次に、犠牲者は全裸で拘束具に吊られます。このとき、体を支えるために胴体で1か所、手足の自由を奪うためにそれぞれ1か所ずつ拘束されます。また、足の拘束に関しては両足を閉じさせるタイプと、足が開くよう別々に拘束するタイプがありました。ここまでの準備を終えた犠牲者は、とうとう揺り籠に乗ることになります。

装置の上に吊り下げられた犠牲者は、ゆっくりとピラミッドの上に乗せられます。このとき、ピラミッドの頂点に女性なら膣や肛門、男性なら陰嚢や肛門がくるように調整されました。想像するだけで激痛ですね。また、犠牲者は激痛もさることながら、羞恥心や屈辱にも耐えなければならなかったことが容易に想像できます。

この状態からの拷問方法は2種類に分かれました。痛みを増す方法と、放置する方法です。

 

痛みを増す方法としては、ピラミッドに油を塗って食い込みやすくする、犠牲者の足を揺らしたり持ち上げる、足に重りをつける、拘束している紐の位置を下げて三角錐により深く食い込むようにするなどの方法があります。どれもこれも激痛だったことが想像できますね。また、このようなことをされれば犠牲者は出血したはずです。犠牲者の血によって赤く染まるユダの揺り籠は、資料で見るものよりもより一層おぞましい姿をしていたことでしょう。また、足を別々に拘束された犠牲者には両足が開くように拘束を調整され、屈辱と羞恥が増す拷問も行われました。特に、女性はこんなことされるのは耐えがたい苦痛だったでしょうね。

放置する方法は、一見して大してつらくないと思うかもしれません。ですが、私はむしろ苦痛を与えるよりも効果的な拷問だったと考えています。この拷問具の名前はユダの揺り籠ですよね。揺り籠とは子どもが眠るために使われる寝具です。つまり、ここで言う放置とは1日の拷問を終え、眠る際にこの拷問具に放置することを意味します。

「今日の拷問はこれで終わりだけど、明日も拷問するから今のうちに寝て英気を養っておくんだぞ。ただしお前のベッドはユダの揺り籠だけどな。」

こんなことを言ったのかは分かりませんが、やっていることを言葉にすればこういうことですよね。当然、こんなものに乗っていては恐怖で寝れるわけもありません。結果、睡眠不足と恐怖で意識が混濁した犠牲者は、拷問間の望む自白をすることになったことでしょう。

 

 

歴史

この拷問具はスペインで発明され、中世ヨーロッパで利用されました。

大抵の地域では「ユダの揺り籠」と呼ばれていましたが、フランスでは「ナイトウォッチ」と呼ばれていました。これは、この拷問具が犠牲者を眠らせないために利用されたことを意味していますね。こんなエグい見た目しているのに何で揺り籠なんだと思ってしまいますが、これは皮肉で付けられた名前なんでしょう。ユダ、つまり背信者にはこのベッドで眠るのがお似合いだと。眠れませんけど。

この拷問具が後世にも強い影響を与えたことは、この拷問具に似た形状の様々な拷問具が生まれていることから想像できます。代表的なものには三角木馬がありますね。思うに、ユダの揺り籠は危険すぎるという意見があったのでしょう。もしも拷問中に拘束が切れたらどうなるか? 想像もしたくないですね。その点、三角木馬なら命に係わる重傷を負うことはありません。もっとも、死なずに済むというよりは死ねないと表現したほうが正しい気もしますが。

ちなみに、この拷問具はほとんど洗われることが無かったそうです。肛門や性器に挿入され、さらには出血を起こすこの拷問具が極めて不衛生だったことは容易に想像できます。そんなものに乗せられた犠牲者は、仮に拷問されたあと生きて釈放されたとしても感染症に苦しみ、最悪死亡することもあったでしょうね。つくづく恐ろしい拷問具だと感じます。

ただし、この拷問具で最も恐ろしいのはその悪意や激痛ではなく、現代でもラテンアメリカでは利用されているということでしょう。具体的にどの国で使われているのかまでは分かりませんでしたが、今なおこの拷問が世界のどこかで行われているというのは、想像もしたくない事実でした。過去のものであるべき拷問が現代にも存在する。これほど恐ろしいことは無いでしょう。