魔女とは何か?

魔女狩りについて考えるとき、どうしても知っておかなければならない知識があります。それが、魔女とかいう輩は何者なのか? ということです。魔女狩りは文字通り魔女を狩ることなわけですから、魔女がどんなものなのかを知らなければ考えようがないですよね。

そこで質問です。そもそも、魔女という文字を見て何を想像しますか?

 

現代の魔女のイメージ

高齢で、シワの深い顔で、鷲のくちばしのような鉤鼻で、山奥に一人で住んでいて、大きな鍋で怪しげな薬を作っている老婆..…みたいなのを想像しますか? それとも、ゲームのような超派手な魔法をバンバン撃つ大きな杖を振るう黒衣山高帽の少女……を、想像したかもしれません。

上で書いたのは両方とも私の中にある魔女のイメージですが、大抵の日本人にとって魔女というのはこんなイメージではないかと思います。特に、前者のイメージについてはグリム童話などの創作物が原因だと言われています。確かに、私も最初に見た魔女はグリム童話の絵本の登場人物だったような気がします。後者については……どこから生まれたイメージなんでしょうかね。不思議です。

 

魔女はフィクション

ここで1つ、勘違いしてはいけないことがあります。それが、上で書いたような魔女は空想上の生物であり、現実には存在しないということです。そんなの当たり前じゃないか! と、思われるかもしれません。実際そうですよね。もしかしたら私が知らないだけで、この世界のどこかに居るのかもしれませんが、今回はその可能性は無視します。

このように、現代の魔女とは、過去の創作物に影響を受けて作られたフィクションです。そして、この過去の創作物に影響を受けるという現象は魔女狩りのあった時代にも起こりました。つまり、過去にあった魔女像に影響を受けて作られた虚像であるということです。当時から見て過去の創作物に当たるのは何か? その答えは、古代の記録や神話などでした。

 

魔女狩りの時代の魔女とは

では、魔女狩りのあった時代、つまり近世の魔女は具体的にはどんな存在だったのでしょう? これについては当時の書籍の記述を参考にしましょう。

魔女は、悪魔と結託することによって、おのれの目的を遂げようとする者。(『悪魔崇拝』1580年)

魔女は、悪魔と同盟を結び、悪魔の助けを利用して不可思議を行うことに同意する者。(『妖術論』1608年)

魔女は、悪魔と結んだ契約の力によって、常識では理解できない不思議を行う者。(『妖術論究』1599年)

他にも魔女を定義する書籍は多く存在しますが、どれを見ても大抵このように定義されています。つまり、悪魔と結託して、不思議な術で目的を達成するであるというのが魔女の定義だということですね。

当時、本物の魔女が存在したのでなければ、そのイメージは現代と同じで過去の創作物に起源を持っているはずです。ということは、これらの書籍に書かれている魔女のイメージにも起源があるのではないか? と思いますよね。実際、存在します

悪魔の結託の起源

この悪魔との結託という概念は、旧約聖書にも「死との契約」や「地獄との協定」という言葉で出てきます。そして古代キリスト教世界で多大な影響力をもっていたアウレリウス・アウグスティヌスによってより強固なものとなりました。

実際、異端審問研究の専門家であるH.C.リーによって「悪魔との結託の観念はアウグスティヌスに由来する」(『魔女資料』1939年)と書かれたように、不可思議な術を使うためには悪魔と結託することが必要だという観念は彼から始まったと考えて間違いないようです。

達成する目的の起源

では、そもそも魔女たちは何が目的で悪魔たちと結託するのでしょう? これについては様々な書籍でかなり多くの記述があります。全てを記載するのは無理なので、一部を箇条書きにしましょう。

  • 農作物を枯らす
  • 嵐や災害を引き起こす
  • 疫病を流行らせる
  • 家畜を不妊にする
  • 人間を不妊にする
  • サバトに参加する
  • 箒で空を飛ぶ

などなど、実に様々です。これらは全て、魔女とされた人々が拷問で自白した内容として報告されたものです。そして同時に、魔女が行う悪行であると当時考えられていた行為でもありました。

なぜ、これらが魔女の行う悪行だと考えられたのか? それは、古代に存在した悪魔や魔女が行っていたことだからです。

魔女は家畜を不妊にする魔術を使うことができる。そして目の前に不妊になった家畜がいる。つまり、魔女の仕業だ! という考えです。見事な三段論法ですね。

 

つまり、魔女は何者なのか?

今までの話をまとめると、魔女狩りが行われていた時代において、魔女とは「古代に存在した様々な魔術を使う存在のイメージが、悪魔との結託により不思議な術を使えるようになるという要素と結びついた存在」だと言えます。

では、そんな魔女がなぜ魔女狩りという非道な仕打ちを受けるハメになったのか、次回から数回に渡るコラムで書いていきたいと思います。