水責め椅子

拷問解説

水責め椅子(Ducking Stool)

時代 中世〜近世

地域 イギリス

備考 刑具としても利用された, 懲罰椅子(Cucking Stool)と呼ばれることもある

 

 

形状と使用方法

椅子を使った拷問具はいくつかありますが、そこに水責めの要素を付加したのがこの拷問具です。構造は至って単純で、犠牲者を座らせるための椅子と、それを吊り下げる天秤によって構成されています。椅子には犠牲者を拘束する為の手枷や足枷も付いていたようですね。また、この拷問の性質から、川や池などの水がある場所に設置されました。

使い方ですが、まず、犠牲者を椅子に座らせて動けないように拘束します。そして、天秤を動かせて椅子ごと水中に沈めました。どれだけの時間水中に沈めるかは執行人が決定します。言ってしまえば、水責め椅子とはたったこれだけの拷問なんですよね。数ある拷問の中でも大掛かりな部類に入るこの拷問ですが、やることはシンプルですね。

また、拷問具の中には簡単に致命傷を与えうるものや、悲惨な傷跡を犠牲者の体に残すものが多くありますが、それらに比べればこの拷問はかなりマシな部類に入るでしょう。執行人が誤って死なせてしまうことは少なかったでしょうし、拷問が終わったあとは外傷が残ることもありません。とは言え、水に沈められるのは十分に苦しいことですし、真冬の冷たい水に沈められることは少なからずショック死の危険性を孕んでいたでしょうから、楽で安全な拷問とは間違っても言えないですけどね。

 

歴史

水責め椅子は中世から近世イギリスで主に使用されました。かなり一般的に広まっていたらしく、これと晒し台の設置は市町村の義務とされていました。従わなければ罰金を払う必要まであったようですから、イギリス全体でこの道具を必要としていたことが分かりますね。ただし、これは拷問が頻繁に行われたことを意味するものではありません。というのも、実はこの拷問具は軽犯罪に対する懲罰具としてよく利用されていたからです。

この時代の軽犯罪というのは、具体的に言えば、口やかましいガミガミ女、挑発屋、口論をした者、分量をちょろまかしたパン屋や肉屋や酒屋などのことを指します。口論したくらいで水に沈められてはたまったものではないですが、頭を冷やして冷静になれということでしょうか。

また、この拷問は水を使うという性質上、野外で行われることになります。その為、犠牲者は野次馬に来るであろう市民たちに晒されることになり、晒し刑としての性質も持っています。もしも犠牲者が嫌われ者だったなら、罪人として椅子に拘束され身動きのできない状態はとても危険だったことでしょう。もちろん、刑を執行する執行人たちがその場にいるわけですから直接危害を加えるような行為は止められたでしょうが、石を投げられる程度のことは覚悟する必要があったでしょう。

一方、この道具を拷問具として利用する場合、この椅子に座らされる対象は主に魔女の疑いを持たれた人達でした。何故、特に魔女がこの拷問の対象になったのかというと、魔女のように魔に属する者は火や水などの神聖な物に触れると正体を表すという宗教的価値観が当時の人々に根付いていたことが原因です。

実際、この拷問具が発明される以前から魔女と疑われた者を水に沈める試水法と呼ばれる判別法が存在しました。ちなみに、この方法では水に沈めば人間、浮けば魔女と認定されます。何とも救いがない話ですが、当時と現代では価値観が全く異なりますから、一概にこれを間違った行為だと断定することはできないのかもしれません。

余談ですが、この拷問具はイギリスのすべての市町村で設置を義務付けられていたこともあり、結構な数が現存しています。イギリスに旅行に行く予定があるなら、探してみるのも良いかもしれません。

 

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