猫の爪(スペイン式くすぐり器)

拷問具の中には、名前だけを見ると使い方やその恐ろしさが理解しにくいものがあります。この猫の爪は、そんな拷問具のひとつだといえるでしょう。「猫の爪」や「くすぐり」の文字からは想像しにくいですが、これは数ある拷問具の中でもかなり血なまぐさい部類の拷問具です。

形状と使用方法

猫の爪(Cat’s paw)は、数本の鋭く尖った金属の鉤爪を持つ拷問具です。金属製の熊手を想像すればイメージしやすいでしょう。また、熊手でいえば取手に当たる部分の無いタイプもありました。

使い方は至ってシンプルで、犠牲者の肌をこの拷問具の爪で引っかくだけです。このとき、引っかく部位は手足→胸→背中→首→顔の順で行われました。致命傷になりにくい部位から拷問するということですね。鋭い鉤爪で引っかかれるわけですから、皮膚は裂け、その傷は肉や骨にまで達したことでしょう。しかも、犠牲者の苦痛は体を裂かれることだけでは終わりません。他の拷問具でもそうですが、この拷問具は使用後も洗われることがありませんでした。そんなもので肌に傷をつけるわけですから、拷問に耐えたとしても感染症に苦しめられることは避けられなかったでしょう。この拷問具の名前は猫の爪ですが、その効果を考えればむしろライオンの爪とかトラの爪のほうが似合っている気がしますね。

冷酷な合理性

また、この拷問具はその性質上、犠牲者を裸にして使用されました。服を切り裂いても意味ないですからね。さらに、拷問中に犠牲者が大きく暴れると執行人の手元が狂う可能性が有ります。そのため、犠牲者は手足を紐で引っ張られ拘束されることにもなりました。このとき、拘束の為にラックが使われることもあったそうです。いや、むしろラックでの拷問に耐えた犠牲者に対して猫の爪が使われたと考えたほうが正確でしょうね。

なんにせよ、全裸にして身動きできない状態にすることはそれ自体が犠牲者に精神的苦痛を与える拷問になります。その上、肌を切り裂く拷問まで行われるとあっては、よほど意志の強い人でもなければ耐えるのは難しかったでしょうね。

技量の要求される拷問具だった?

この拷問具は、他の拷問具と比べるとあまり高度な道具ではないという印象があります。というのも、拷問を行う執行人の技量によって犠牲者に与える苦痛が変わってくるからです。例えば、ラックでは執行人はハンドルを回すだけですから、同じ回数だけハンドルを回せば誰がやっても同じ苦痛を与えることが出来ます。しかも、ハンドルは長い棒を使って回すので大した労力も必要ありません。

一方、猫の爪では鉤爪を使って犠牲者の肌を切り裂かなければなりません。人間、というか動物の皮膚は紙や布とは違い強い弾力性を持っています。その為、刃物ですら切り裂こうと思えば容易ではありません。おそらく、執行人は大きな労力を必要とされたことでしょう。しかも、拷問なので犠牲者を死なせてしまってはいけませんからね。弱い力では皮膚を切り裂けない、強すぎる力では犠牲者を死なせてしまうかもしれない。そのような状況で拷問を行わなければならないことは、執行人にとっても大きな精神的苦痛を伴ったことでしょう。

余談

余談ですが、この拷問具はイタリアのサンジミャーノにある中世犯罪博物館にて展示されています。近くに行く予定があるなら見に行くと良いですよ。

さらにもう1つ余談があります。

この拷問具の名称ですが、猫の爪のほかに猫の足と呼ばれることもあるそうです。思うに、取手がついているものを猫の足、ついていないものを猫の爪と呼んだのではないでしょうか。書いておいてなんですが、すごくどうでもいい情報ですね。

ちなみに、この拷問具はスペインの異端審問でよく使われました。そのため、スペイン式くすぐり器(Spanish ticker)とも呼ばれています。肌を撫でている様子をくすぐりに見立てたのかもしれませんが、この拷問具を使われて笑うことが出来た犠牲者はいたのでしょうか。疑問です。