ブレストリッパー(スペインの蜘蛛)

拷問において、自白を促すための手段として常により効率の良い方法が採用される……とは限りません。そこが拷問の興味深いところだと思います。

ブレストリッパーBreast Ripper)もその性質上、苦痛のみを追求したのではない拷問具の1つです。

形状と使用方法

ブレストリッパーはトングやアイスピックのような形状をした拷問具です。それらとの違いとして、強い力で扱っても壊れない頑丈な鉄製であること、先端が鉤爪のような鋭い二股になっていることが挙げられます。もちろん、氷を掴むのにこんな改良は不要です。では、なんのためにこのような形状にしたのか? それは、拷問のためでした。

ブレストリッパーがどんな拷問具なのかは、その名称から推測することができます。ブレストとは胸や乳房を指す言葉です。用途から考えるに、乳房の意味で使われたのでしょう。リッパーは切断機という意味なので、この拷問具を直訳すると乳房切断機となります。用途が一発で分かりましたね。

ブレストリッパーにより拷問される犠牲者は、まず胸をはだけさせられました。そして、乳房をこの拷問具で強く掴まれます。鋭く尖った爪は肌にしっかりと食い込んだことでしょう。これだけでも十分に苦痛だったろ思いますが、ここまでは準備段階です。しっかりと掴んだ拷問具を、拷問官はねじったり引っ張ったり、そして引き裂いたりしました。鈎爪が食い込むだけれも痛いのに、そんなことをされればより痛くなるのは当然です。胸を拷問されるという屈辱と苦痛の中、犠牲者は自白や反省を促されることになりました。

また、この拷問具は鉄製なのでして使用することもできました。熱い鉄の棒を押し付けられるだけでも苦しいのに、それが鋭く尖っていてしかも乳房に食い込むことになれば、どれだけの苦痛になったか想像も付きませんね。

歴史

ブレストリッパーは中世のドイツで発明されました。

その名が示す通り、この拷問具は乳房を引き裂くための拷問具です。これっていかにも女性を拷問するための道具だという印象を受けませんか? 実は、その印象は正しいです。なぜなら、この拷問具は女性を拷問するために開発された拷問具なのですから。

そもそも、この拷問を受けることになったのは未婚でありながら姦淫を行った、不倫をした、自ら流産を行った、魔術を行い他人を中絶させたなどの容疑がかかった者たちでした。これらの行為の共通点として、性に関わることだと言うことが分かると思います。その為、性に関わる部位として女性の乳房に対する拷問が行われたのでしょう。

他の拷問でもそうですが、この拷問は体に絶対に消えない傷を残すことになります。疑いが晴れても傷が消えることはありません。傷が残る部位が胸だというのは、女性にとって耐え難いことだったでしょうね。

改良された拷問具 スペインの蜘蛛

ブレストリッパーは恐ろしい拷問具ですが、人間の悪意はこれをより凶悪に改造しました。その結果生まれたのがスペインの蜘蛛です。

 

スペインの蜘蛛

時代 中世

地域 スペイン

特徴 より凶悪に改良, 異端審問で使われた

 

 

スペインの蜘蛛Spanish Spider )は別名、鉄の蜘蛛Iron Spider )あるいは単純に蜘蛛The Spider )と呼ばれることもありました。名前から分かる通り、スペインで作られた拷問具です。

形状や用途は、ブレストリッパーをより効率的にしたものという説明が最適でしょう。数が増え、より鋭くなった鉤爪は蜘蛛の足のように見えます。胸の脂肪を掴むのに都合が良かったことでしょうね。また、こちらは胸以外にも腹などの掴みやすい部位に対しても利用されたようです。しかし、これは大した変化ではありません。

最大の違いは、この拷問具が吊り下げて使用するものだということです。何を吊り下げるのか? もちろん犠牲者をです。その為の鎖がついており、天井や柱に繋がっていました。当然、拷問官の望むとおりに吊り上げる機構もついていたことでしょう。

 

この拷問具の使用方法はブレストリッパーと途中までは同じでず。まず、犠牲者の胸をはだけさせてこの拷問具でしっかりと掴みます。ここまでは同じですね。次に、後ろに付いている鎖を引き上げて犠牲者を吊り上げます。その結果、犠牲者は全体重を胸で支えることになりました。とてつもない激痛が走ったことでしょうし、最悪の場合、裂けてしまうこともあったでしょう。

吊り下げることの利点として、苦痛が増すことだけではなく拷問官の負担の軽減も挙げられます。むしろ、私はこちらのほうが大きな利点なのではと思っています。

ブレストリッパーはたしかに凶悪な道具です。ですが、肌を容易に引き裂ける刃物のような道具かといえばそれは違います。上の方に載せてある写真を見て分かるとおり、この拷問具は掴むのに特化している代わりに切断に向いた形状をしていません。これを使って肌を切り裂こうと思ったら、かなりの力が必要になったはずです。

一方、スペインの蜘蛛では拷問官が自らこの拷問具を使って肌を引き裂く必要はありません。犠牲者を吊り下げていれば、自重で勝手に裂けますからね。吊り下げるのには滑車を使ったでしょうから、対して労力は必要なかったはずです。

使われる犠牲者からしたら、喜べない改良だってでしょうけどね。