異端審問の印象を一変させる本

異端審問といえばどんな印象があるだろうか?

一方的で不条理な尋問、権威の名のもとに行われた暴力、恐怖、冷酷な非情さ、そして何より、拷問の舞台。

人によって何を思うかは様々だと思いますが、良い印象を持つ人は少ないでしょう。

 

そんな異端審問を、しかしコミカルにまとめた本がありました。それが『ペルーの異端審問』です。

名前のとおり、ペルーで、より正確にはその首都であるリマで行われた異端審問について資料に基づいて書かれた本になっています。

前々から気になっており、機会があれば読もうと思っていた本だったのですが、つい先日買って読み終わりました。興味深い話が多かったです。

 

人間は合理的でない行動をとってしまうことが度々あります。特に性的な欲求が絡むとこの傾向は強くなる、というのは心当たりもあることだと思います。

異端審問が非常で冷酷な行為だったとは言え、それを行うのは聖職者という人間です。いくら聖職者が敬虔であったとはいえ、人間であることには変わりありません。やはり欲求に流されて気が迷ってしまうということは、実際にあったようですね。

 

個人的な話ですが、私は異端審問や魔女狩りを性的な欲望に起源を持つものだとする考え方が好きではありません。

そんな感情の力だけで、何十年も何百年も続くシステムを作れるとは思えないからです。

しかし同時に、いかに優れたシステムであれ、それを使う人間によっては大きく性質を変えさせられることがあるというのもまた事実です。

異端審問が堅固な理論によって塗り固められた冷徹なシステムだったとしても、それを性欲を満たすために利用した聖職者がいなかったとする理由にはならない。ということです。

 

この本で挙げられた異端審問の例を見ていると、異端審問には様々な顔があるのだということが分かります。欲望にまみれた異端審問も、盲目的な信仰の結果として行われた異端審問も、さらには政治的な目論見の上で行われた異端審問も、全て実際に存在したものであるということを認める。

そういう柔軟な思考が必要なんだと、改めて再認識しました。